中国在住10年を経て帰国。
中国、という日本とは違った視点で、
日本をあれこれ考えてみる、
日中文化考ブログ by 田中奈美
安倍・トランプ会談を故事成語で表現してみると

 北京の新聞「新京報」を見ていたら、新華社電の安倍・トランプ会談を報じる記事に、「意在‘亡羊補牢’(意は‘羊を亡(うしな)いて牢を補う’にあり)というタイトルがついていた。

 

 亡羊補牢は『戦国策』という前漢末に編纂された名言満載の書に出てくる故事成語。

 日本語でも使われていて、羊が逃げたあとで、柵を修繕する、すなわち心配を繰り返さないよう、事後に補強すること、失敗しても挽回可能といった意味になる。

 

 中国のインテリ新聞や雑誌では、記事タイトルに、なかなか絶妙な故事成語を使っていることがある。これぞ、漢字文化の醍醐味というところだろうか。

 

 ちなみに、記事の内容は、日本でも報じられている会談にいたるまでの背景と、会談後の安倍首相やトランプ氏の反応。さらにTPPや在日米軍問題に関して、トランプ氏の選挙活動中の過激発言は、実務方向へ修正がかかりそうだとしながらも、今後の不透明とする解説。

 

 最後に、「注意すべきことは〜」として、「日本の国内の一部には、トランプ氏の当選を一種の戦略チャンスとみている勢力がある」と続き、「右翼メディアである「産経新聞」の数日前のコラムによれば、もし米軍が撤退すれば、日本は自国の防衛能力を強化しさえすれば、空母の建設を含め、経済と軍事上でアメリカに深刻に依存しない「偉大な国家」になる」とのこと。

 

 日本から見ると、ずいぶん、ファンタスティックな内容にも思えるが、中国のネットには、上記と同じ記事が、複数のメディアに転載されている。

 新華社電の記事なので、上からこういう記事を配信せよというお達しがあるのかもしれない。以前から、こんな論調の記事はちょくちょく掲載されてきた。

 

 日本のメディアも他国メディアの事を言える立場ではないかもしれないけれど、メディアを通じて作られる認識のギャップに、少々、複雑な気持ちになる。

 

「安倍特朗普 意在“亡羊牢”

http://epaper.bjnews.com.cn/html/2016-11/19/content_660671.htm?div=-1

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日本の戦争と中国の戦争が交わるとき

 朝、テレビをつけていると「とと姉ちゃん」が流れた。

 日本ではこうしてときどき、かの時代のさまざまな人が体験したあの戦争の物語が繰り返される、と思う。

 

 少々不謹慎かもしれない書き方をすれば、それはどこか、終わらないビデオテープのようだ。

 そのビデオテープはときどき止まり、するとしばらくの間、人々はそのテープの存在すらすっかり忘れたようになるのだが、特に8月ともなるとまた、一斉に再生が始まり、画面の向こうでは同じことが、違う物語で、繰り返されてゆく。

 

 一方、中国は中国で、常日頃から、あの戦争の物語が、あの手この手で繰り返されている。こちらは常にノンストップで、途切れることなく再生され続けるビデオテープのようである。

 そして日本のあの戦争と、中国のあの戦争が交わることはない。

 

 と、思っていたのだが、「KINBRICKS NOW」さんで、超なんちゃってな「交わり」が紹介されていた。

 

【動画】貞子が八路軍に加入し日本軍を成敗、進化続ける中国ネットドラマ(高口)

http://kinbricksnow.com/archives/51979501.html

 

 中国ではネットのミニ動画が一大産業となっていて、数多くのエッジの効いた作品集とクリエタ―集団を輩出している。

 これはそのうちの一つ。

 

 「万合天宜」という比較的新しい動画制作企業が制作する「報告老板(社長に報告)」シリーズ第2季6話の一部だそうで、くだんのパートは、八路軍が抗日活動中、日本軍から奪った荷物の中に、とあるフィルム映画があり、再生したら貞子が出てきちゃって、その貞子が抗日戦士となって……、という「リング」と抗日ドラマをクロスしたおバカなパロディ。

(中国語が分からなくても、けっこうツボれると思う。「KINBRICKS NOW」よりリンク抜粋)

 

 

 内容が内容なので、規制の対象になりそうだと思っていたら、案の定、残念ながら、おおもとの動画は当局によって削除されてしまっている。

 それでも、ネットではあの手この手で転送されている模様(ただ、私は中国のサイトで全編再生できるものを見つけられませんでした)。

 

 こうして日本と中国の戦争が交わることはやはりなさそうだけれど、いまやインターネットを通じて、削除できない「交わり」が中国には生まれている。

 でもそれが日本→中国という、どこか一方通行の壁を超えられないことを、少し懸念してしまう。

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もしも12星座が春晩(中国版紅白歌合戦)をプロデュースしたら
 中国は今月19日に正月を迎える。
 いまごろ北京は帰省ラッシュがいよいよ大詰めを迎えているころだろう。
 
 さて、そんな北京の新聞「新京報」をみていたら、上記タイトルの広告があった。
 http://epaper.bjnews.com.cn/html/2015-02/16/node_8.htm
 
 風刺(?)漫画のオリジナルもとネタは、ネット名「同道大叔」の「十二星座吐槽シリーズ(吐槽=tucao==日本語の「突っ込み」)。
 画面を拡大するとこんな内容。
 http://bbs.61.com/thread-342159-1-1.html
 
 各星座の人が、中国の紅白歌合戦「春節聨歓晩会(春晩)」をプロデュースしたらこうなった!というもので、「官」的天下の中央テレビが製作する国民的年越し番組「春晩」の、あの「模範的」年越しムードを知っている人(=大陸の人)のみが笑えるというマニアックな内容ながら、それをさらに一回転半くらいひねって広告にしたのが、「民」的天下のタオバオ。
 
 春節が放映される大みそか(17日)夜8時に、スマホでモバイルタオバオにアクセス、テレビ局マークをスキャンして、現金をもらおう!というキャンペーンである。
 優等生番組的「春晩」をモチーフに、ちゃっかりキャンペーンはり、洒落っ気のある広告をうつところに、中国のたたきあげ民間企業の奥深さを見るようである。
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中国のベストセラーのナゾ?
 これまた少し前の話になるが、中国でも断捨離ブームが到来した。
 やましたひでこ著『新・片づけ術「断舎離」』の中国語版は昨年7月に出版され、たちまちベストセラーになった。
 
 断舎離ブームはニュースで報じられ、類似本が雨後のたけのこのように出版されている。
 中国のアマゾン風サイト「当当網」で、同書の中国語版によせられたレビュー数はざっと2万2000件にものぼる。

 もっともこの種のレビューは「ヤラセ」のことも多いので、どこまで実数かはわからない。
 実際、中国で一般に「売れる本」の部数は、実は日本とそれほどかわらないそうだ。
 
 中国は、人口こそ多いものの本を読む層は限られる。日本のように通勤電車で本を読んでいる光景はまず見ない。
 そこそこ売れて1万部を超える程度。数百万部のベストセラーは、日本同様、そんなにバンバン出るものではない。
 
 それでも、当当網では「売れた」と話題になった本には何万というレビューがつく。
 日本で数百万部を売り上げた本で、たとえサクラのレビューがついたものでも、そこまでの数にはならないだろう。
 したがってこの数万というレビュー数は、出版産業の規模ではなく、ステマ産業の規模を示す数字ではないかと常々思うのである。
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党メディア的ジャーナリズムの正しいあり方

 春節が明けに、中国の国営通信社「新華社」が各地の政府部門がちゃんと仕事をしているか、という調査をしていた。

 それによれば、おおむねだいたいちゃんと仕事をしていたが、中には数名の職員が煙草を吸いながらおしゃべりしているようなところがあったり、あるいは極端に人手不足なところがあったりしたという。

 

 これについて、北京のインテリ新聞「新京報」では「政府部門は長期休暇症候群を患ってはならない」なる社説を掲載、同紙の記者も北京各省庁の窓口をまわり、「概ねちゃんと仕事してました!」とルポ。

 

 ただそれだけの記事ではあるのだが、一見すると、「官を監督する正義のメディア」風でありながら、やっているのは休み明けの窓口職員チェックというところに、「新京報」の命運を見るようだ。

 

 「新京報」はもともと、中国で硬派なメディアグループ「南方報業伝媒集団」@広東と光明集団@北京が、「真実報道」をかかげて2003年に創刊した新聞だった。

 当初は社会の闇に切り込むようなハードボイルドなすっぱ抜き記事を掲載し、一気に読者を獲得。

 私も創刊時にちょうど北京にいたのだが、新しい時代が来るようなわくわく感があった。

 

 しかしそのうち「真実報道」の文句が紙面から消え、2011年の高速鉄道事故批判では北京市党委宣伝部の管理のもとに置かれるようになり、さらに今年初め、南方報業伝媒集団が全保有株を北京市に売却したことが報じられた。

 

 私はずっと「新京報」を定期購読していたのだが、最初は元気でやる気にあふれていた配達員もだんだんやさぐれてゆき、配達トラブルを秒速で解決していた責任者も去り、人が交代するたびにどんどん悪化してゆくサービス体制に、昨年末はとうとう契約を更新しなかった。

 

 契約更新の催促もいつもなら1カ月前からしつこく連絡があるのだが、今年は契約が切れる前日に電話があり、「なんでもっとはやくいわないの?」というと、「だから1日前に連絡したじゃん」といわれる始末だった。

 

 そして公的メディアとなった同紙の正月明け社説は上述の通り。

 党メディア的ジャーナリズムの正しいあり方とは、常に「規範」のうちにあり、体制外のこと(例えば外資企業バッシングなど)は大いにもりあがるものの、体制に関しては常にプラス報道で、たまにさしさわりのない程度の批判がスパイス的に添えられ、「こうあるべき」といった理想論が展開され、その背景にある大きな問題にスポットがあてられることはないということを、改めて思うのである。

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CCTV朝のニュースの面白映像は海賊版?

 中国中央テレビの朝のニュースに、世界の面白映像を紹介するコーナーがある。

 感動映像からくすっと笑ってしまう映像までいろいろあって、なかなか楽しいのだが、画像がどうも動画サイトからぱくってきた?という荒さである。

 

 版権はどうなっているのかなあと思ってみていたところ、先日は、日本のバラエティ番組の、「ペットが、大人がいなくなると、子供の前で突然しゃべりだす」というどっきりシーンを流していた。

 これも動画サイトからパクってきたような荒さで、おそらく版権は取得していないだろうと推測された。

 

 中国の中央テレビといえば、それはもう中国のテレビ界を牛耳る天下の大ボス官製メディアだ。

 その官製メディアのニュースに取りいれられたエンタメが、世界の面白画像の寄せ集めで、たぶん版権も微妙というところに、なんだか趣きを感じてしまう。 

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中国の身内争議バトル調停番組「第3調節室」

 北京テレビで「第3調節室」というトーク(?)番組を放映している。

 日本語にすれば「第三者調停室」という感じになるだろうか。

 

 番組コンセプトは法律で解決しえない紛糾を番組で解決しましょう!というもので、 夫婦の離婚問題や財産分与など、主にご家庭のもつれにもつれた争議について、当人たちが番組に登場してそれぞれの主張を述べた後、スタジオにいる裁判所の調停員や弁護士、心理カウンセラーなどのゲストたちが。さまざまな角度から話しあいの落とし所をさぐりつつ、調停もどきのことを行う。

 

 人の不幸はなんとやらというが、実際にプライバシーそっちのけで展開されるドロドロの強欲バトルがめっぽう面白く、また夫婦問題では、ある女性が夫との不仲を番組に訴え出たものの、双方の話をよくよく聞いていくと、実はかなりの凶暴な奥さんだったなど、ドンデン返しもあったりして、ついついわくわくしてしまう。

 

 この奥さん、最初は「夫が暴力をふるう」と言っていたのだが、夫に話を聞くと、「確かに暴力はふるったかもしれないが、それは彼女がテーブルの角で僕の頭をぶんなぐったからで、自分は身を守ろうとしたんだ」などという話が出くる。

 そこで番組ゲストが奥さんに「今の話は本当か」とたずねれば、奥さんは「でも私は軽くはたいただけじゃない」と応酬。

 

 対するだんなが「軽くでもなんでも机の角でぶったたいたらあぶないじゃないか」と言葉を返すと、奥さんいわく「私が本気でなぐったらあんた死ぬでしょ、だからいつも手加減してるじゃない!」。

 ちなみにこの奥さんは巨漢で、だんなはガリガリの細身である。

 

 このほかにも親の介護と遺産をめぐる兄弟の熾烈バトルとか、ダメ息子と親のバトルとか、ネタはつきない。

 

 解決の仕方は「模範」的だし、ヤラセも入っているかとは思うのだが、当人たちが顔だしもOKで激しく権利を主張しまくる様子をみていると、これが番組になるということ自体、今の中国のムードなのかもしれないと思う。

 

※「第3調節室」

http://video.baidu.com/v?word=%B5%DA%C8%FD%B5%F7%BD%E2%CA%D2&fr=ala9&ct=301989888&rn=20&pn=0&db=0&s=8 

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エンタメ風ゴミの投げ捨て指導

 湖南テレビでこのところ、車がビュンビュン通る大通り、赤信号を無視して渡る「中国式横断」や、信号待ちの車からのゴミのポイ捨てなどを、地元警察とタイアップして楽しく指導するという「公益番組」を放映していた。

 

 何が「楽しい」かというと、まず、不法な横断をしている人やゴミのポイ捨てをしている人を、「おーーーーっと、ちょっと待った!」と大げさかつコミカルな感じで止める。

 そうすると面倒事にかかわりたくないという感じで逃げる人も少なくないのだが、中にはカメラを向けられ、バツが悪そうに「ちょっと急いでたものですから」とか「ついうっかり習慣で捨てちゃって……」と言い訳してみたりする、わりとキャラの立ったおじさんやおばさんがいる。

 

 また、赤信号でちゃんと立ち止った人や、ゴミをポイ捨てせずに手持ちの袋に捨てている人がいると、これもまた「おーーーーっと、ちょっと待った!」と大仰に止める。

 止められた彼らはびっくりするのだが、アナウンサーと警察が怖い顔で、「こちらにいらしてください」など言い、戸惑う相手を路肩まで誘導。

 そこで、「あなたの今の行為はすばらしい!! これは番組からのプレゼントです!」とスポンサーの商品を提供する。

 いきなり表彰された人々はこれまたハトが豆鉄砲をくらったよう顔になったあと、むちゃくちゃうれしそうな笑顔になる。

 

 中国の番組なので、ヤラセもけっこう入っているかもしれないのだが、ともあれ、お上のガチガチな政策方針を、こうしてナイスなバラエティ化してしまう湖南テレビのエンタメ力にはいつも感心してしまう。 

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ウェイボーのプラスとマイナス威力

 

 中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」が、中国社会を動かうる威力をもっていることは、日本でも報じられている通りである。

 でもその威力にはプラスとマイナスが混在する。

 

 先日、四川の大地震にともない、ある女性がウェイボーで、自分の化粧品ブランドをチャリティー販売し、売上を被災地に寄付するといった書き込みをしたところ、「チャリティーを口実に自分のブランドを売り込もうっていうのか」と彼女を叩く声が殺到。

 

 中国では実際、この手の「営業」が少なくない。

 それで彼女のウェイボーには数万件にのぼる強烈なバッシングコメントが寄せられることになった。

 

 これに対し彼女は、「誰も手をかしてくれない、もうこうするしかない」とウェイボーにつぶやきを残し、服毒自殺をはかる。

 それを「ヤラセでは?」とさらに疑う声もあったが、警察に通報する人も多くいて、幸い、彼女は命をとりとめたという。

 

 そういえば以前、ウェイボーをテーマにしたネットのミニ映画でこんな話があった。

 ある若い女性が交通事故で夫をなくす。犯人は分からずじまいで、女性は毎日事故現場で目撃者を募るも効果なし。

 

 その姿を見ていた売店の青年は、女性に同情し、ウェイボーで犯人捜しを募る。

 すると事件を目撃したという人の話から、犯人と思われる人物が特定される。

 

 青年が警察に通報しようとしたところ、その前に、くだんの女性はその「犯人」を、夫がそうされたようにひき殺す。

 が、その後に、実はその人物はただの通りすがりだったことが判明する。

 

 これはあくまでフィクションだが、中国のネットはとかくフィクションとノンフィクションが入りまじり、フィクションはノンフィクションのように、ノンフィクションはフィクションのように色を変える。

 それはそのまま、ウェイボーにも投影され、その威力をどこかあぶなかしいものにもしかねなかったりする。 

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前向き地震報道

 四川省で再び起きた大地震で、中国のメディアは総力をあげて現地報道を展開していた。

 ただそれはもっぱら、大変な困難や危機的状況を前に、人々は一丸となって立ち向かい、そこに大きな感動が生まれるといった方向性である。

 ポイントは「1つになる人々の心」であり、当然ながら現地の人々の困惑や不満などがあふれ出ることはない。

 

 これ自体、いつものことではあるのだが、中国で大変なことが起こるたびに、メディアがかくも「一致団結」の前向き報道をしているのをみると、それはすなわち、この国には普段、「一体になる心」がないということの裏返しではないだろうかと思ってしまう。

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