中国在住10年を経て帰国。
中国、という日本とは違った視点で、
日本をあれこれ考えてみる、
日中文化考ブログ by 田中奈美
「雄安に家を買う人にはわからない話」と90年代生まれのこと

 「雄安に家を買う人にはわからない話」といった、ちょっと面白いタイトルのネット記事が目についた。雄安新区は、先日、新設が発表された習近平総書記肝いりの経済特区。で、さっそく地価が高騰しているという。そこに家を買える人というのは、いわゆる財とコネがある人、ということになるだろう。

 

 では、その人たちにはわからない話というのは何か、というと、「ちまたの大使館外荷物一時預かり商売(商売大使外的存包江湖)」、つまり、北京のアメリカ大使館前の「私設」荷物預かり人のこと。

 

 実は北京のアメリカ大使館では、2011年から携帯電話と手荷物の館内持ち込みを禁止、荷物の一時預かりサービスもやめているそうで、そこに目を付けたのがちまたの庶民。勝手に、荷物預かりサービスを展開し、小さい荷物1件30元、大きい荷物1件40元で預かる「サービス」を提供している。

 

 こういうアングラ商売の常で、意外にもけっこうちゃんとおり、荷物はマイカーで保管、客には自分の携帯番号と預かり番号を記した札を渡してくれるそう。客の携帯を紛失したときには、弁償したこともあるとか。

 

 昨今、アメリカのビザを取る人がふえ、月の収入は数千元にのぼる。もっとも、城管(路上警察)の取り締まりがあれば、預かった荷物をもってさっささと逃げなければならない(彼らの逃げ足は速い)。

 中には荷物を預けておいて、代金30元を払ってくれない客もいるそうで、「アメリカまで行ける金持ちが、30元すらけちるなんて」というコメントも。

 

 もっともこれはいまに始まった話ではない。いまさらといえばいまさらな話題だが、「雄安に家を買えるような人にはとうていわからない」という、ナイスなタイトルのおかげで、けっこう注目され、北京の大手新聞「新京報」が後追い取材していた。

 

 では、このネット記事、ソースはどこかと調べたところ、「公路商店」という聞きなれないメディア。調べてみると、90年代生まれの康陽という青年が立ち上げた微信メディアだった。若者向けのアングラ系アカウントとして、人気があるらしい。

 公式サイトを開くと、ずいぶんおしゃれなデザインの上に微信のアカウントのみ表示されていて、それをスキャンすると、微信で記事がよめるようになる。

「公路商店」http://www.ontheroadstore.com/

 

 記事は、ゆる〜いカルチャー系、日本のホストを紹介する記事なんかもあったりする。「黒市(ブラックマーケット)」という、なんともひとをくった名前のネットショップも展開していて、ちょっとウィットのきいた商品を売っている。

 

 この康陽、大学在学中に、「在路上」というインディペンデントマガジンを発行しており、メディアに取材された記事がネットに残っていた。ネットでちょっと注目されている90年代生まれの一人、というところだろう。

 

 数年前、新世代として90年代生まれが注目されたころ、彼らはまだ学生だった。それがいまや20代半ばから後半にさしかかり、独自の感性とアイデアで、新しい展開をはじめているように思う。

 

 いま、注目の深センのメイカーズしかり。

 身近なところでも、以前、暮らしていた北京のマンションの向かいの部屋に住んでいた90年代生まれの青年は、親のコネで入った大手外資企業をやめ、アメリカにわたり、水中カメラマンとして、なかなか個性的な写真を撮っている。

 

 あるいは先日、知り合ったやはり90年代生まれの青年は、ビンテージカーの輸入ビジネスを手掛けて成功している模様。

 ただの官二代の成金かと思いきや、ビンテージカーに興味をもった理由について、「車には時代と社会の歴史があるから面白い」と味わい深い話をする。

 

 5〜6年前、北京でよく通っていたおしゃれ系カフェでアルバイトしていた90年代生まれの青年たちは、独立して自分の店を持ち、それぞれのセンスを発揮している。

 

 この先、90年代の生み出すカルチャーとビジネスは、中国の有り様を変えていくのではないか。小さなネット記事から、そんなことを改めて考えた。

 

※「大使外的存包江湖,去雄安房的人是不懂的」

http://www.sohu.com/a/132134212_570238

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