中国在住10年を経て帰国。
中国、という日本とは違った視点で、
日本をあれこれ考えてみる、
日中文化考ブログ by 田中奈美
中国版火サス

 日本で昼間、テレビをつけていると、かつて量産されたサスペンスドラマの再放送があっちこっちのチャネルで放映されていて、いまさらながら、日本はお茶の間サスペンスの一大算出国だなと思う。

 

 ひるがえって、中国では、日本ほどサスペンスドラマを見ることがない。

 加えて、中国サスペンスといえば、抗日ドラマか歴史サスペンスのイメージが強い。

 

 記憶をたどると、以前、中国で、人気を博した刑事ドラマがあった。しかしその人気の高さゆえ、手口をまねた犯罪がおきるとよろしからぬ、というお達しが出て、一時、サスペンスドラマがぱたっとなくなり、かわって登場したのが抗日サスペンスである。

 

 抗日ドラマは当局の検閲を通りやすい、歴史ものも現代でないからオッケー、くわえてサスペンスものはけっこう人気、ということで、これらの掛け合わせが誕生したのではなかったかと思うが、正確なところはわからない。

 

 いずれにしても、中国サスペンス=抗日サスペンスまたは歴史サスペンスのような印象があったのだが、先日、北京でテレビをつけていたら、列車もののサスペンスを放映していた。

 「U57案」という、どうやら10年ほど前に放映された映画の再放送であったらしい。

 

 北京発深セン行のU57号列車内でおきた連続殺人事件の謎に鉄道警察の隊長と新人コンビが迫るという内容で、最後に新人警官が犯人を前に謎解きをしてみせ、犯人が「俺がやったんだ!」と自白するくだりは、まさに火サスか土曜ワイドといったところ。

 おもわず、おお!と身を乗り出してしまった。

 

 ところが、日本の火サス(もしくは土曜ワイド)と何か違う。

 何が違うんだろうと考えると、それは「正義の質」かもしれない。

 

 犯人を問いただす正義のチープさは日本も中国もさほどかわりないのだが、日本のそれが、どちらかというと個人の正義である。国家に忠実!みたいなタイプが主人公をバリバリこなすことはまずないだろう。どちらかというとアウトローっぽいタイプや、ごくふつーの主婦のような一般庶民が多いかもしれない。

 

 対する中国版火サスの正義には、なんというか、国家権力のかぐわしさがある。

 つまり、主人公は懐が深くて、人情味にあふれていたり、ちょっと破天荒だったりするけれど、あくまでも党に忠実、みたいな、そういうタイプである。

 今の中国で、党にたてつく主人公はありえない。

 

 ということで、ところ変われば正義も変わる中国版火サス。

 が、その後、火サスみたいなドラマが中国でじゃんじゃんつくられた、という話を聞かない。

 それは検閲を通りにくいから、というより、日本のお茶の間サスペンス風のお約束感が、あまり中国の人のハートには響かないからではないか、と思う。

 

中国版火サス「U57次谜案」

http://www.iqiyi.com/lib/m_205098214.html

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