中国在住10年を経て帰国。
中国、という日本とは違った視点で、
日本をあれこれ考えてみる、
日中文化考ブログ by 田中奈美
距離

 10月に北京に行ったとき、こんなことがあった。

 きっかけは、中国武術の師から、「君の個人的問題は解決したのか?」と聞かれたこと。

 個人的問題ってなんだろうと思ったら、結婚問題のことだそうだ。

 今生では解決しそうにないと告げると、師は、数年前にシングルになった北京の男性がいるので、会ってみないかという。

 

 もう明日には東京に帰るという日で、できれば練習に集中したかったのが、断るのも失礼な気がして、会ってみますと返事をした。

 すると、師は、おもむろに、その場で電話をかけ、男性を呼び出した。

 

 生徒さんの一人だという男性は、わりと遠方にいたそうなのだが、師に呼ばれ、とりあえずやってきた。

 それからぽつぽつと話をして、WECHATを交換し、東京に戻ってからもぽつぽつとやり取りが続いた。

 日本には行ったことがないが、北海道には行ってみたいというので、では今度、北海道で集合してはどうかと提案し、それはいいねと、相手も乗り気だった。

 

 それでふと、日本と中国の、人の距離の近さに、しみじみした。

 これが10年前なら、おそらくWECHATの前身のQQで、ちょっとしたメッセージのやりとりは続いたかもしれない。だが、当時、スマホはなかったので、パソコンを立ち上げているときでなければチャットはできなかったし、何より、北海道で集合しようなどということは、ビザや経済状況などの諸事情で、簡単に言い出せることではなかった。

 

 それがいまや、WECHATのビデオ通話でいつでも顔を見て話ができ、北海道で会わない?的な話が気楽にできる。なんなら、向こうのほうがよほどリッチなので、逆にこちらが自分のお財布事情を気にしてしまうくらいである。

 さらにこの先、5Gが普及していけば、目の前にいるバーチャルな相手と話をするような時代になるのかもしれない。

 

 昨今は、クローンペットのように、死んだものとの距離も大幅に「短縮」されるくらいだから、生きている人間の「距離」はますます近しくなるようである。

 

 と、思っていたものの、あるときから少々、状況がかわった。

 それまでは、もっぱら、WECHATの文字メッセージで、やりとりをしていたのだが、音声チャットでやりとりするようになってから、相手の音声が再生できなくなったのだ。

 

 WECHATには、いちいち、文字を打ち込まなくても、しゃべればそれが録音されて、音声メッセージとして相手に送信できるトランシーバー的な機能があり、文字を打つのに慣れていない、もしくはそれをまだるっこしいと感じる少なからずの中国人が多いに利用している。

 

 くだんの彼も、「文字より声のほうが、温かみがあっていいじゃん」と、音声メッセージを送ってくるようになった。ところが、これがなぜか2回に1回かそれ以上の割合で、再生されないのである。

 最初は私のスマホの問題かと思ったものの、他の友人の音声メッセージは、どんなに長くても再生できる。

 

 ということは、音声メッセージになんらかのフィルターがかかっているのかと、妄想してしまう。

 メッセージの内容はまったくもってたわいのないことだし、あまりなんでもかんでも、当局のせいにするのもどうかと思うのだが、それ以外、どんな理由があるのかさっぱり思いつかない。

 そして、再生できないので、返事もできず、毎回、「再生できない」と相手に伝えるのも、なんだか言い出しにくく、結局、そのままフェイドアウトした。

 

 そして、思うのである。

 近年、技術の著しい発展で、人の「距離」はますます近しくなるものの、こと、中国においては、その技術の発展ゆえに、距離がますます遠くなることがある、かもしれない、と。

 そんな次第で、私の個人的問題は、やはり今生には解決しそうもない。

 

【ブログを見てくださるみなさまへ】

 本年も、拙ブログを見てくださり、本当にありがとうございました。

 今年は、個人的にはささやかながら人生最大の(と思いたい)ピンチの年で、なかなかブログも更新できませんでした。

 でも、私の乳がん治療も、あとはホルモン剤を粛々と5年間飲むだけとなりました。少し前、副作用の関節痛が出て、足の悪いお年寄りのように立ち上がるのにプルプルしていましたが、いまはすっかり元通りです。

 最近、太って、バイト先の検診では、代謝異常でひっかかりました。かかりつけ医に、「これも副作用ですか」と聞いたら、「みんなそういうけど、だいたいは手術終わってほっとして、元気になって、食べ過ぎるんだよ!」と、一蹴されました。

 老人ホームに入った両親は、慣れないながらも落ち着き、カラになった実家も、ちょうど、借り手が見つかったところです。

 昨年、腎臓型リンパ腫というわりと珍しい病気で死にかけた猫1は、今年初めまで続いた抗がん剤治療が劇的に効いて、この1年、寛解状態を維持しています。

 腎不全末期で闘病していた猫2だけが、残念ながら先日、天国に引っ越ししてしまい、一瞬、食事がとれなくなりましたが、すぐに元に戻り、あいかわらず体重が減りません(やっぱり副作用だと思うんですけど…)。

 そんなこんなでいろいろあり、本当にたくさんの方に助けていただき、元気を頂戴した1年でした。 

 また、ぼちぼち更新してまいりますので、気が向いたときにのぞいていただければうれしいです。

 

 そして最後に、いま、困難を抱えている方々に、おだやかな時間が戻ることを切に願っています。

 

 来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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