中国在住10年を経て帰国。
中国、という日本とは違った視点で、
日本をあれこれ考えてみる、
日中文化考ブログ by 田中奈美
ダイヤモンド・プリンセス号と「はたらく細胞BLACK」とサイトカインな人々

 とても不謹慎な表現なのだが、このところ、ダイヤモンド・プリンセス号の一連のニュースを見ていて、脳内で「はたらく細胞BLACK」がリフレインしていた。

 「はたらく細胞」とは、人間の体内ではたらく細胞たちのスリリングな日常を擬人化した大人気コミックおよびアニメ。「〜BLACK」は、不摂生した人間の体内ではたらく細胞たちの、とってもブラックな日常を描いた、さならがらホラーのようなコミックである。

「はたらく細胞BLACK」のPVアニメはこちら

https://www.youtube.com/watch?v=_hpb6P9gurA

 

 この「〜BLACK」、主人公の赤血球が(おそらく輸血かなにかで)別の体内に運ばれてくるところから始まるのだが、その体が糖尿病で、腎臓の糸球体は糖分のとりすぎでへろへろ、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にいたっては自殺してしまう、みたいな中で、赤血球はせっせと酸素を送り届けようとするも、次から次へとトラブルが起き続け、働く意味を失いかけてしまうといったストーリーある。

(なお、はたらく細胞の内容には、科学的に間違っているところもあるそうなのだが、そもそも細胞がヒト化している時点でファンタジーである)

 

 では、なぜ、ダイヤモンド・プリンセス号で「〜BLACK」がリフレインしたか。

これはまたとても失礼な書き方になってしまうかもしれないのだが、感染症が発生した巨大なクルーズ船という難しい環境に加え、おそらく政府や船会社など多数の大人の事情が複雑に絡みあうであろう非常に困難な状況で、問題の収束をはからなければならないというミッションは、ブラックな体内環境で壊れそうになる体を、なんとか正常に保とうとはたらく細胞たちの仕事のようだと思ってしまったのである。

 

 もともと健康体であれば、きちんと薬飲んで、はやく寝て栄養とってというごく一般的な正攻法で問題は解決するかもしれない。

 でも、厚労副大臣が船内のゾーニングの状況として、「左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」と、ルートの先が一つの部屋につながる写真をTwitterで告発?するもあっという間に削除する、みたいな謎なことがおきている状況で、正しいことを正しくせよというのは、とてもとても無理ではないだろうか。

 

 でも、こういう状況になると、正しいことを正しくすべしと声高にとなえる人たちがメディアでもネットでもたくさん出現してきて、「はたらく細胞」的にいえばサイトカインをばらまく活性化した樹状細胞のようである。

サイトカインは本来、体を守るためにつくられるものだけれど、放出しすぎると、自分の免疫機能で自分を壊してしまうそうだ。

 

 もちろん確かに、ダイヤモンド・プリンセス号については、他にやりようがあったのかもしれないし、少なくとも困難だという状況自体をもう少しうまく外部に伝えられていたらどうなっていただろうかと素人考えでは思う。でもそこには、どんな状況でも「きちんとやっています」と言い続けなければならない事情があったのだろうか。

 

 思えば、今の日本自体が、BLACKな人体そのものなのかもしれない。これまでは、いろいろ不具合が出つつも、まあまあやってこられた。しかし、実際のところは、まるっと臓器移植して若返るみたいなSFなことがないかぎり、もはやちょっとの運動や栄養管理で健康な体に戻るような状況ではないようにも思う。

 

 となると、まずはこのBLACKな体内で、BLACKなりにどう生き延びるかを考えるかのほうが現実的ではないか。この国で、炎症がおきるたびにサイトカインを放出する人々をみているとそんなことを考えてしまう。

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